

今回は、群馬県沼田市で1978年の設立から一貫して建築板金のスペシャリストとして設計・積算・加工・施工を請負われている、株式会社テクノアウターの桑原会長にお話しを伺いしました。
株式会社テクノアウターは建築板金工事もさることながら、会長自身が市議会議員も務め、職業訓練施設「利根沼田テクノアカデミー」で多くの職人を輩出するなど、社会における専門工事業の役割について官民両面から取り組んでおられる会社です。
取締役会長 桑原敏彦
まずはテクノアウターについてお聞きしたいと思います。
1978年に会長のお父様が設立されて、会長は2代目として1999年に社長就任、2015年に弟さんにバトンタッチされました。
激動、であったであろう16年間についてお聞きしてもよろしいでしょうか?
まず、私が父の会社である くわばら建築板金 に入社したのは23歳の時でした。
地元の商業高校を卒業して、経理事務所に勤めていたのですが、会社を法人化するタイミングで自然な流れで入社した、ように記憶しています。
そこから、私個人の話をすると、建築士に挑戦したり、宅建に挑戦したり。会社の方では、社名を今の株式会社テクノアウターに変更したり、得意先が倒産したり、と、激動という意味では社長になる前からも激動でした。
33歳で社長になってからも、一級技能士に挑戦したり、全国板金技能大会に挑戦したり。当時抱えていた借金を返済したり、ISO9001の認証を取得したり、と、私は常に何かに挑戦することを大切にしています。
今は、利根沼田テクノアカデミーで人材の育成や産業の継続に挑戦されていますが、当時から何事にも挑戦することを心がけておられたのですね。
アカデミーのお話は後ほどお聞きするとして、社長に就任された時は会社はどのような状況だったのでしょうか?
当時は、従業員が8名ほど、年商も1億を少し下回る程度でしたが、累積赤字が6,500万もあり、借り入れも3.5億ありました。
ですから、私が社長に就任して、まず最初に挑戦しなければいけなかったのが、赤字の解消と借り入れの返済でした。
元々挑戦することは続けていたのですが、より明確にするために、自分の目標を高めるための「夢公園」を作って、仕事がうまくいったら自分の好きな花を買って公園に植えようと決めました。
花が増えて公園がにぎやかになれば、ちゃんと頑張れてるな、逆に、花が枯れて公園が閑散としてきたら、もっと頑張らなければ、と思えます。
今でも、目標を定めて、達成できたら、花を植える、それを続けています。
当時の笑い話ですが、同じくらい借金がある会社の経営者と「このままだと借り入れ10億になってしまうな」「よし、どっちが速いか競争しよう」という話しになって別れた数年後、私が「こっちはもうすぐ目標達成だぞ、そっちはどうだ」と聞くと、彼が「私ももうすぐです、もうすぐ10億です」
「ばかやろう、どっちが先に借り入れを返済するかって意味だよ」「えーそっちでしたかー」と笑うものだから、私ももっと高い目標を掲げないといけないなと思いました。
高い目標といえば、経営理念にもなっている「日本一の板金屋になる」ですね。
これは、私が個人的にこの業界に入る時に目標にしていたものを、社長になる時に、会社の目標、経営理念にさせてもらいました。
よく勘違いされるのですが、日本一とは、会社規模や売上の事ではありません。
本業とは違う分野にも事業を広げたり、人をたくさん集めても、売上日本一にはなれるかも知れませんが、我々が目指す日本一はそういうものではありません。
一番は 技術力 日本一
技術力とは、職人の施工技術もそうですが、監理力、提案力、人間力なども含まれます。
取扱い商品や事業形態もそうですし、個々の意識や育成方法まで、それらが伴ってはじめて、テクノアウターは「日本一の板金屋だ」と言えると思っています。
私はすでに代表を退いた身ですので、経営に口出ししませんが、これは壮大な目標です。
単なる言葉としてではなく真の日本一になるために、組織作りの段階ではISO9001が大いに役立ちました。
マドックの社長にだまされて始めた取り組みでしたが、日本一という目標を達成するために(夢公園に花を植えるために)営業はこうする、組織はこうする、管理はこうする、目標はこうする、改善はこうする・・・
様々な要素をつなぎ合わせて、作っては試し、うまくいかない部分は修正してまた試し。あっちを修正したら元々うまくいっていたこっちが今度はうまくいかなくなってまた修正し、の繰り返し。
2002年から始めた取り組みが、認証取得を経て、できた(と思えるものができた)のが2006年の事でした。
今も多くの企業がテクノアウター様の取り組みを参考にしようと訪れますが、おっしゃられる通り、一要素だけを参考に持ち帰ってもうまくはいきません。下手をすると逆効果になる可能性もあります。
見学に行かれる際は必ず全体の建付けを見てから個々の要素を参考にしてもらえれば思います。