インタビュー
「​株式会社テクノアウター」

取締役会長 桑原敏彦

どのような経緯で現在の体制になったのか

では、少しだけ核心に迫るお話しをお聞きします。

テクノアウター様は、営業、設計・積算、工事監理、加工、職人、という組織ですが、どのような経緯でこのような体制になったのでしょうか?

 ちょっと横道から入りますが、過去には(これもマドックの社長にだまされて)リフォーム事業やチラシ配りをした時期もありました。しかし、私があまり好きではなかったこともあって、うまくはいきませんでした。
食わず嫌いではないんです。
 そこで我々の強みは、建設会社からの依頼にもとづく中規模・大規模工事だと決めて、職人の技術力を磨いていきました。当然、施工技術だけでは建設会社の評価は得られませんので、工事監理という役割が生まれ、職人にその役割をやらせる訳にはいかないので、専属の部署ができました。
 そうすると、地場を中心に建設会社からの評価が高まり、依頼が集まりだしたので、工事監理は設計・積算にかける時間が多くなり、結果として職人に一定程度の現場での判断力が求められるようになってきました。当然、個々の能力にはバラツキがありますので、施工品質を標準化するため、また、工事監理の業務を分散させるために、設計・積算と加工の専属部署ができました。

どのような会社にするかを決めて動きだすと、どのような組織が最適かが決まってくるということですね。

がんばれ報奨金制度ができたのもこの時期でしょうか?

 そうです。職人に一定程度とはいえ現場管理を任せる以上は、何をどこまで任せるのか、なぜ任せるのか、任されるとどうなるのか、など、説明する必要がありました。幸いなことに目標を定めて挑戦する文化が定着しつつあったので、任せる現場の目標を設定して、達成すれば報奨金が得られるという、がんばれ報奨金制度が生まれました。
 これには思わぬ効果もありました。報奨金を得られるのは職長だけですので、職人は早く職長になりたい。職長になるためには会社が決めたレベルの技術と能力と資格が必要ですので、進んで勉強してくれる訳です。
 このようにして磨かれた技術力が、また建設会社の評価へとつながり、その評判が県内・県外へと広がっていきました。依頼は増え続けましたが、設計・積算、加工、工事監理がそれぞれ専属の部署として動いていますので、混乱することもなく、しっかり対応できています。

 もう一つ、テクノアウターの職人は7年経ったら独立するか監理になるか、という制度があります。
少々厳しい制度のように見えるかも知れませんが、腕一本で勝負している職人は、長く社員として勤めていると、欲も出てくるし甘えも出てくる。欲は歓迎しますが、甘えが許される会社ではありませんので、強制ではありませんが独立をすすめています。
 しかし、職人は独立した方が稼げる一方で、一人では仕事は取れませんし、5000万円も6000万円もする機械が必要になるので、普通は独立しても工場を建てて機械を買うなんて無理です。
 変な別れ方はしたくありませんし、独立したあとも一緒に仕事をしていきたいと思っていますので、仕事は心配するな、機械も心配するな。極端な話し、今まで通り道具一つで朝来てもらえるように、テクノアウターの専属部署が組織されています。
 いま現場で働いてもらっている職長は、みんなテクノアウターの社員と元社員ですよ。

ありがとうございました。目標に向かって様々な要素を適切に配置することで、日本一になるための組織が作られていることを、垣間見ることができました。

その他にも、工事監理のための時間と空間の作り方や、全員が創意工夫する意識を高める商品開発会議など、「日本一の板金屋になる」ための取り組みを、今回は時間の都合でご紹介できませんでしたが、機会がありましたら是非ゆっくりお聞きしたいと思います。

次のページへ: 職人さんの技術力について

1 2 3 4