インタビュー
「​株式会社テクノアウター」

取締役会長 桑原敏彦

テクノアカデミーについて

それでは、続きまして、テクノアカデミーについてお聞きしたいと思います。

専門工事業は人の省力化やオートメーション化が難しい業種であるがゆえに、確実に担い手を維持し、地域・社会における役割を継続することが重要だと考えておられます。
そこでテクノアカデミーでは、即戦力化できる人材を短期で育成する教育体制を構築することで、専門工事業の魅力をあらためて若い人達に伝えるとともに、地域・社会の活性化と遊休施設の有効活用をデルタモデルとして全国へ広げていこうとされています。

 テクノアカデミーは、廃校になった小学校を訓練施設、宿泊施設に改装して、建築板金コースと大工コースの2つからスタートさせました。午前中はみっちり基礎研修の繰り返し、午後から座学と技能の実習を行って1日が終了するというカリキュラムになっています。
訓練は3ヶ月間、毎日続きますので、近くにアパートを借りて通う人もいますが、教室を改装した宿泊施設も完備していますので、食事も提供します。
 食事は地元の方にご協力いただいているし、お風呂は近くの温浴施設に協力いただいているし。廃校の利用を含めて、地域・社会の活性化も同時に考える、というのはそういった取り組みの総称と言えます。

 その後、瓦コースが増え、左官コースが増え・・・今はドローン学校も含めると2拠点7業種の訓練が行われています。
訓練はモデルハウスを建てて実践形式で行われますので、元グラウンドにはもう少し余裕がありますが、元体育館はもういっぱいです。これ以上業種を増やそうとすると、もう1~2拠点欲しいと考えています。

専門工事だけでも27業種ありますから、単純計算で5~6拠点は必要になりますね。

テクノアカデミーが開校してから9年。自社の訓練センターまで含めると15年。
様々な課題があったと思います。

 今も課題だらけです。
そもそも廃校を利用するだけでも一筋縄ではいきませんでした。県や市に協力を要請して、訓練施設として登録し、宿泊業や飲食業の許可も必要でしたから。
本当に協力いただいた方々には感謝しかありません。

 訓練校の運営や訓練自体は軌道に乗ってきましたが、今は新たなニーズに対応するために、訓練コースに柔軟性を持たせることに挑戦しています。
 建築板金コースは現在4・5・6月の3ヶ月カリキュラムなのですが、新卒で採用した企業にとっては、入社してすぐにアカデミーに行ってもらうことになりますし、外国人の場合は、そもそも3月に入国できるとは限りません。
5月6月に入国してきたり、中途採用した人は長くて丸1年入学を待つことになりますので、それでは意味がありません。

その1年の間に、見て覚えろ式の指導をされると、せっかく興味をもってこの業界に入ってきた人材が辞めてしまう可能性もありますね。

 そもそも指導や教育が自社でできないからアカデミーを頼ってくるので、そこは柔軟性をもって、いつでも入校できますよ、というスタイルに変えていかないといけないと思っています。
 一緒に訓練を受けている子たちでも訓練の進み具合が変わってきますので、午前中の基礎訓練はいいとして、午後からの座学と技能の実習は何らか工夫する必要があります。
指導する講師も、1ヶ月目の子と卒業間近の子とでは対応も変わってきますので、例えばヘルメットに1ヶ月目の子は1本、2か月目は2本など、ラインを入れるのも1つの方法です。

茨城のMURATA社長が取り組んでおられる、ALLWIN協同組合との連携も考えておられるとお聞きしました。

 彼が行っているのは、外国人技能実習生の特定監理団体で、テクノアウターでも技能実習生や特定技能外国人が複数活躍していますが、最初は彼が運営するような監理団体を通じて入国してきます。
 技能実習生は、まず入国後約1ヶ月160時間以上の講習を監理団体から受けて、それから各企業に配属されるのですが、彼の団体はその中に建築板金の技能実習を組み入れようとしているそうです。
しかし、現実には1ヶ月では日本語を教えたり、日本での生活様式を教えたりと、十分な技能実習が行えない、そこで、アカデミーの(柔軟性を持ったカリキュラムの)訓練と連携できないか、と模索しているところです。

 例えば、入国して1ヶ月目はALLWINで講習を受けて、2ヶ月目はアカデミーで訓練を受ける。
その間に、ハーネス・玉掛けの資格を取らせて、3ヶ月目に各企業に配属する。
中途の場合は、内定後1ヶ月はアカデミーで訓練と資格試験を受けてから入社する。など
 今まで3ヶ月かけてやってきたアカデミーのカリキュラムを1ヶ月に圧縮、さらに資格まで取りに行かせるとなると、相当内容は吟味する必要がありますが、これも挑戦です。

 先ほど言ったとおり、日本人か外国人か、新卒か中途か、に関わらず、アカデミーでは随時受講生を受け入れていかなければならない。そうしなければ話にならないと思っています。
建設業界は本当に人(担い手)がいない状態ですので、4月からですよ、3ヶ月ですよ、と言っていては、アカデミーの存在意義に関わります。
 地域・社会における建設業の役割を継続するために、その担い手を確実に維持する。
その担い手を育成・輩出し続けるのがテクノアカデミーの役割ですから。

 アカデミーでの訓練の話しに戻りますが、基礎訓練と座学と実習の中で一番大切なのはやはり安全管理です。安全管理はどれだけKY動画を見せたり座学で教えても、いざ実習でハーネスをかけさせる時はドキドキします。
各企業に戻ってからも、知識や技術は身についていても危険な行動をしているようでは、アカデミーで何を学んできたんだと言われてしましますので、そこは徹底的に教えていきます。

 訓練だけなら1ヶ月でも2ヶ月でも詰め込めばできるのですが、安全管理(安全行動)を含めて、しっかり理解して、ちゃんと実践してもらうには、やはり最低3ヶ月は必要だと思います。
 それでも、3ヶ月も通わせられないよというニーズに対応していくなら、内容を絞り込むしかありません。 ALLWINとの連携でも、3ヶ月分のカリキュラムの中から、各企業のニーズに合わせた訓練内容を選択してもらっても良いかも知れません。

同じ建築板金業といっても、野丁場中心の方や町場中心の方、リフォーム型の板金屋さんなら板金と設備の併用訓練もあるかも知れませんね。

これまでも多くの卒業生を輩出してこられたと思いますが、新たなニーズと、新たな連携先との出会いで、テクノアカデミーの新たな挑戦が始まっていますね。

 昨年、アカデミーの卒業生が100名を超えました。
これからも1千人1万人と建設業の担い手を輩出していけるよう、課題に向き合い、目標を定めて、挑戦し続けます。

これからも、どんな挑戦をされるのか、期待しています。

今回は群馬県沼田市のテクノアウター、桑原会長にお話をお伺いしました。

ありがとうございました。

​株式会社テクノアウター 取締役会長 桑原敏彦
株式会社テクノアウターは、群馬県沼田市に拠点を置く建築板金工事の専門業者です。 屋根、外壁、雨樋などの金属板加工から取り付けまで一貫して行っており、多様な建物に対応する技術力を強みとしています。 顧客の期待に応えるエキスパートとして、豊かな技術と実績を誇っています。 マザー牧場や川場田園プラザなど、数々の施工実績を有しています。

​株式会社テクノアウターホームページ

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