インタビュー
「株式会社 オガサ製工」

代表取締役 小笠原 孝彦

地場産業大賞に選ばれたガルパワー

そして、この「ガルパワー」が地場産業大賞に選ばれたとお聞きしたのですが。

 2023年12月に高知県で、防災のことだけではなく県内の企業さんが作った製品だったり、サービスだったり、いろんな観点から生み出した商品群から、審査されて、選出されたんです。

おめでとうございます。

 ありがとうございます。

 そこでもやはり防災関連製品であるということを評価いただきました。 防災先進国高知県ですので、必ず起こる南海トラフ地震の被害を、屋根を軽量化することで、少しでも減らすことができる。それを日々屋根や建物に携わっている、高知県の企業がやっていますよ、というのはちょっと評価されまして、今回高知県地場産業奨励賞というのを頂くことになりました。

従業員さんが自らプレゼンをされたそうですが、社長ではなく、従業員さんがその審査員さんの前に立って行ったプレゼン。どうでしたか。緊張をされてたんじゃないですか。

 見ている私の方が緊張していました。
審査のほうは事前に、一次審査として書類選考があったんですけど、その段階からもううちの二年目の若手社員に対応してもらいました。私の方はもともと、県の防災だったり取り組みだったりに参加してたんで、やることも分かってたんですけど、やはり、若手のこれからの成長のためにも、自分たちが作っている製品が本当に素晴らしくて、これをPRしていくには、やっぱりその担当者も使いながらでも懐に落とし込んでもらえたらな、と思って、思い切って任せてみました。

 私はデータは提供しましたが、内容の組み立てはその担当者が吟味して、まとめて、本番プレゼンに臨んでもらいました。
私の方は、プレゼンに対する質疑応答に技術的な内容も入ってくるので、同席はしてましたけど、その製品の元々のきっかけだったり、特長だったりを、担当の若手社員が、自分の言葉で、しっかりとプレゼンしてましたね。

 若手の育成と言うのであれば、考えてみて、やってみて、自分の懐に落とし込んで、自分の言葉で語るということが、人に伝わりやすい。
そういうところも教えてあげないといけないですよね。

 だから、賞を取ったことも嬉しいんですけど、若手のスタッフが自分で考えてプレゼンしたことが、全然知らない審査員の方にどしんと響いたと。
私にとってはそれが一番嬉しかったですね。

一見すると、社長に責任を押し付けられてと見えなくもないのですが、先ほどの部長という役割を担っていただくというエピソードを聞いた後だと、若い人たちや従業員さんに対して、自ら動くことの大切さだったり、その方法というものを、いかに教えてあげられるか、ということを真剣に考えておられるのだと、社長の行動を見ていると伝わってきます。

指示があってできる人間というのは山ほど居ると思うのですが、指示がなくても目的のために自ら考えて動ける人間というのは、ほんの一握り。その一握りが御社の中には何人もいらっしゃるなと。
それはやはり、社長がこれまで、そういう行動を、経営を、されてきたからなんだろうな、と見ててるのですが、いかがでしょうか。

 そう見えているのであれば、嬉しいですね。

ちょっと余談になりますが、何でも自分でやりたがる社長さんがいらっしゃって、俺だったらもっとうまくこうできるぞ、みたいなアピールを従業員さんにされるのですが、それだとどうしてもその人が育たない。そのうち、そこまで言うんならもう社長の考えで1から10までやってくださいよ、もう指示もらえればその通りやりますから、みたいな人しか残らなくなってしまう。

社長がやられているのはその真逆で、おそらく任せるとなると、プレゼンもその場の緊張もそうですが、大丈夫かなあいつ、うまくやれるかかな、緊張した顔してるなぁ、って思いながらドキドキしながら、それでも任せられたんだと思います。

 一つ、プレゼンでちょっとした裏話がありまして。
実はプレゼンって、パワポを使ってスライドを解説して進めていくんですが、マシントラブルで途中からほぼパワポが使えなくなってしまって、最終的には映し出してるスライドもモニタも、プレゼンしてる本人に見れない状態になってしまったんです。

 私はスライドを操作しているのでどれが映ってるか分かるんですが、プレゼンしている本人には私が合図をして説明していたので、そこの連携が取れなくなって。
そこで、その担当者が、内容が懐に落ちていなかったら、プレゼンの資料を読み上げるだけの説明だったら、恐らく何も言えなかったでしょうね。

 作り込む時にしっかりリハもやって、自分の懐に落として、自分で考えてみんなに分かってもらいたい、という思いがあったからこそ、パワポが使えなくても言葉でしっかりとプレゼンが出来たんだと思います。
多分めちゃくちゃビビったと思いますよ。

 そんなトラブルもありましたけど、でも、しっかりと準備していたので、素晴らしいプレゼンで、結果的に賞もいただけたので、一番は、担当者がめちゃくちゃ成長したんだな、やっぱり任せてみて良かったなと思います。
結果として上手くいかない時もあると思いますけど、それはそれで、得れるものが何もないってことはないんで、賞なんてどうでもいいから一生懸命やってみろと。
やってみて、こういう結果になったので。
若手が成長していく姿を見るのは、やはり賞を取った事よりも嬉しかったですね。

行動してみなければ失敗も成功もないわけですからね。
まずは行動してみて、今回はたまたま成功でしたけれども、それが糧となって、仮に賞が取れなかったとしても、その従業員さんにとっての糧になれば、それは失敗ではないですよね。

 失敗じゃないと思いますね。
最初から、社長無理ですそれはとか、こんなプレゼン私やったことないんでって言われると、もう成功も失敗もなく、成長なんかもなかったと思います。

 そういう自分で考えて、自分の言葉で人に伝える。
無茶ぶりしたからこそ一皮むけたなぁと非常に感じますし、嬉しい出来事ですね。

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